歌集 須臾の残響
歌集 須臾の残響
著 者:森村 稔
発行日:令和3年7月1日
ページ数:288ページ
定 価:本体1500円(税込1650円)
著者紹介
森村稔(もりむら・みのる)
昭和10年大阪生まれ。小学校3年生のとき、戦時疎開で徳島へ。徳島県立名西高等学校卒業。
東京大学文学部美学美術史学科卒業。
博報堂、リクルートに勤務。大学講師を経て現在無職。
著書『クリエイティブ志願』『朝の独学』『ネクタイのほどき方』『自己プレゼンの文章術』(以上、筑摩書房)、『青空は片思い』『どこ行っきょん』『こりゃあ閑話』、歌集『寝しなの歌』(以上、書肆アルス)ほか。
内容紹介
令和2年の1年間を中心に、前歌集『帰りしなの歌』以降の670余首を収録。1ページ3首組、16章立て。
読みどころ
各章から一首紹介します。
律儀なる椅子
数十年、腰落とすたびギシギシとリアクト欠かさぬ律儀なる椅子
冬近き庭
夾竹桃、梅、まんさくを切り払い冬近き庭空広くなる
のっぺらぼうの歳月
コロナ禍に悪事無縁の蟄居にてのっぺらぼうの歳月過ぎ行く
キョロキョロ
キョロキョロのキョロとは何ぞむなしくも答え求めて虚路をうろつく
一日一首
歌作り一日一首と決めたれど一首が作れぬすぐ日が暮れる
ポカポカ、ポツリ
ポトリ、ポキ、ポカポカ、ポツリ、ポカン、ポコ、ポの音かわいい擬音いろいろ
隣家の猫
晩秋の雨降りつづき庭暗く隣家の猫が十日も来ない
ケイパビリティ
リアルでは撃っても撃っても当たらない それがお前のケイパビリティ
世に問う大仕事
コロナ禍の年末二つの便りあり 後輩世に問う大仕事成す
このごろ、あれれ
それなりに馴染んできたるわが身体(からだ)このごろ、あれれ、リズムが違う
不憫なるかな
われらみな不憫なるかな事あれば自己防衛をまず考える
須臾の夢
有線の古賀メロディの鳴り止まずわが生涯の須臾の夢にて
浪漫倶楽部
有線の〈浪漫倶楽部〉を切らずおく戦前歌謡の悲しきに堪え
夢と知りつつ
一団の人びと猛然駆けてゆく われはそれ追う夢と知りつつ
わが歌は
わが歌は細めのうどんコシもなくどなたの喉にも呑みこめましょう
洞(うろ)から顔
何かしらことばが洞(うろ)から顔を出すそれに餌をやり飛び立つを待つ